僕が好きなミュージシャンは、たぶんだけど、みな、ちょっと聴いただけでわかる。
そのミュージシャンにそっくりな人もいてたまに騙されるけど、
まあでもほぼわかるんじゃないかな。
そもそも好きなミュージシャンは、僕がCDをたくさん持ってる確率が高いので、
その人の演奏を判別できる、というよりは、CDで記憶している、ということもままあるのだけど。
ちなみに、僕はそれほど好きではないけど、そのプレイスタイルがすごく個性的だ、という理由で、聴いたらわかる人もいる。
でも、これに関しては、たぶん、多くの人がわかる、というレベルなんじゃないかな。
だからそれほど声高に宣言するほどのことでもないかな、という気がする。
何が言いたいのか、わからなくなってきたけど、
えっとつまり、僕はデクスターゴードンのことを書こうとしていたのだった。
僕が好きなテナーサックス奏者、デクスターゴードン。
で、聴いたことがないアルバムも実際のところ多数あれど、
ちょっと聴けば、あ、デクスターだな、ということはたちまちにわかる。
で、なんだかうれしくなる。「うわー、デクスターやん~」てかんじで。
こんなこともあった。
昔、あるテナー奏者と、あるライブハウスでご一緒してたときに
店内であるレコードがかかり、
僕が「これ、デクスターですよね」
と言ったら、そのテナー奏者が
「いや、違うよ」とすぐに否定した。
デクスターにしてはけっこうタイムもタイトで、
パーカーっぽいところがあったので、僕も最初は誰だろう、
と思ったのだけど、フレイズのはしばしにデクスター節ともいえる
言い回しが表れていて、やっぱりデクスターだな、と感じたのだった。
で、そのテナーの方が更にしばらく、そのプレイにじっと耳を傾け、
おもむろに、あ、これ、デクスターか?うん、ひょっとしてそうかも、、、
とつぶやいた。
それから、それまでカウンターの向こうで忙しそうにしてたマスターが一息ついたっぽかったので、「これ誰ですか?」って訊いてみたところ、
「デクスターゴードンの若いころのレア盤。あんまり「ぽく」ないでしょ?」
とおっしゃったのだった。
まあ些細なことといえばそうなのだが、
自分のデクスターのファンとしての地位というか名誉というか(なんじゃそりゃ)お墨付きのようなものを得たような気がして、なんだかうれしかったのである。
昨日行った、いつもの店モリーで、たまたまデクスターゴードンの話になって
たっぷりかけてもらったので、その余韻でこんな文章を書いてみた。
こんな話をしていて肝心なことを書いてないな。
つまり、デクスターゴードンのどこが好きなんだ?ということ。
まあ、でもそれを説明するのに言葉はそんなにいらないであろう。
一言、「歌心」である。
(ま、正直なところ、ある種、一番ずるい言葉だという気もするが、これ以外に適当な言葉を思いつかないのである)
彼のテナーは、ほんと、どのフレイズとっても、歌にあふれている。
ベタベタでちょっと恥ずかしいようなフレイズも吹くし、誰でも吹いているような平凡なバップフレイズだってけっこう使いまくるけど、なんというか「うたぢから」が強くて、聴き手を納得させてしまうような気がするのだ。
これは、ほんと誰にでもできるようなことではない。
演奏者としては、一番大事なことだと思うけど、一番難しいことである。
難しいというより、努力して会得できるようなことではないようなものだ、という気もする。とはいえ、もちろん大事なこととして常に意識していないといけないことではある。演奏者としては。
意識してどうなるものでもないのかもしれないけど。
そこはそれ、信念、みたいなものかな。
結果どうこうじゃなくて。
話がややこしくなってきた。
そろそろそんなところで。