ジャズピアニスト平川勝朗のページ

ライブスケジュール他、日々の記録など

鴨川セッション

 

 最近ずっと続けているストリートを始めた経緯とか思うことなど、ちょっと書いてみようと思う。

 

 今年の4月に入り、予定されていたライブがすべて中止になった。

この時考えたことは、人前での演奏ができなくなる残念さもさることながら、セッション感覚が鈍ってしまうことへの危機感であった。

そしてすぐに思いついたのが、ストリートをやろう、ということ。

京都のストリートの定番の場所といえば、四条川端のあたりや三条大橋のあたりだが、なんとなく警察とか自粛警察の目が怖かった。他にやってる人がいればまだよかったけど、コロナになってからそのあたりでストリートやってる人はめっきり見かけなくなったので、なんとなくヤバいのかな、という印象があった。

それに、そもそもストリートといっても、人に聴かせるということより、セッション練習がしたい、という思いの方が強かったので、誰にも文句を言われることのない場所であればどこでもよかった。実際、人のめったに通らない鴨川のかなり上流の方とか、鷹峯の山奥までロケハンしに行ったりもしたのである。

ただ、一緒にやってくれるメンバーを誘うのに、人っ子一人いない山奥でやる、というのはなんとなく抵抗があったし、やはり、最低限誰かに聴いてもらうという可能性も残しておく必要もあるかも、と考え直し、結局出町柳の鴨川デルタ地帯でやることに決めた。

機材の調達、運搬、セッティングに関わる手順、メンバーへの声がけ、など着々と準備を進めていったのだが、4月半ばに京都も非常事態宣言が発令され、さすがにその期間中は自粛を余儀なくされた。

結局なんだかんだで、やっと初めて実現できたのは5月23日だった。

で、恐る恐るのスタートだったが、実際やってみると、通りがかりの人たちの反応が思いのほかよく、練習会のつもりだったからチップ箱すら用意してなかったのだが、それでもチップをくれる人が何人かいて、ちょっと感動した。

そしてその後はほぼ土曜日の午後、やれる限りはやっていこうというスタンスで続けている。当初はライブハウスの営業が復活するまで、という考えだったが、結局、ライブハウスでのライブもやりながらも、この鴨川セッションは続けている。

理由はまあいろいろあるが、端的に言って、楽しいからである。

いつもやる場所が橋の下で、ちょうどいいくらいの音の反響があって、やっていて気持ちがいい。そして、先にも書いた通り、けっこう通りがかりの人が聴いてくれる。で、チップも割と入れてくれる。レストランでチップ制でやっても、知り合いの人が義理堅く入れてくれる以外はほとんど入らないのに、これはまあ不思議といえば不思議である。

コロナの影響が一体いつまで続くのか、もうこの先ずっとこんな感じなのか、それはわからないが、音楽の発信の場所として、屋外を使う、ということは、一つの新しいモデルとして成立するのではないか、と思う。ストリートで音楽を発信することは昔からあることで格別目新しいという訳ではないが、ライブハウスで音楽を聴くのと同等くらいの市民権を得られれば、これはちょっと面白いことになるのではないかな、と思う。

外でやる、というのは騒音や交通の問題などいろいろな問題が起きがちだけど、そのへんを行政かたがうまく整備して、街中のいろんなとこに屋外のライブスポットを設けることができればかなりおもしろいんじゃないかな、と思ったりする。

京都でいえば、鴨川の河川敷なんか、ほんといいロケーションだと思う。とはいえ例えば、今自分がやってる場所が野外ライブをする場所としてメジャーになってしまうと自分たちができなくなってしまう恐れがあるので、それはそれで困るわけだが、、

 

まあそれにしても、このセッションを続けることができる最大の理由は、ひとえに、一緒にやってくれるメンバーの存在である。

正直なところ、ストリートがいくら楽しいといっても、ライブハウスでやるライブよりも厳しい条件というのはいくらでもある。
・砂利、砂ぼこりなどで楽器が汚れたり傷ついたりする可能性がある
・強い日差しも楽器には悪影響
・やる予定をたてていても雨が降れば即中止になる。
・暑すぎても中止になる。
・先に楽器練習の人が使ってたり、近くでやってる工事の騒音がすごかったり、やる場所も保障されない。
・投げ銭が多少あるとはいえ、まあほとんどお金にならない。

といったようなこと。
この悪条件にも関わらず、誘ったら来てくれる人がいる、というのは本当に本当にありがたいことだと思う。感謝の気持ちと申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

あと、まあちょっと余談だけど、ストリートやる上で非常に助かってるのがリチウムバッテリーの存在。キーボードを外で使うとなると、一番のネックは電源なわけだが、ラッキーなことに最近のこのコンパクトな電池があるおかげで、簡単に電源供給ができる。容量もけっこうあるので、途中で切れてしまう心配は全くない。これはほんとうに技術の進歩のおかげというほかはない。