ジャズピアニスト平川勝朗のページ

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デッドマン

蒸し暑い午後、何を思ったか、ネットの配信サービスでジャームッシュのデッドマンを見る。
新作として銀座の映画館で見たのが20何年前、、
全編にわたり死の臭いが充満していて、それでいてこの上なく美しい世界。
それでいて、というのは違う。死へ接近してこその美の世界、というべきか。
酒の酔いも手伝って、危険で甘美な陶酔の境地にはまりこんでしまう。
そうだ、今、森の中を歩けば自分もノーボディに会えるかも、子供じみた妄想がふいに頭の中に広がる。ノーボディというのは映画に出てくるネイティヴアメリカンで、ジョニーデップ扮する主人公のウィリアムブレイクを介抱し、魂の世界(つまり死)へ導く謎の男。
映画が終わるや否や、衝動的に、最近よく散歩する近くの山(通称「法の山」)に向かった。

夕方で、雨雲が空を覆い始めていたこともあって、森の中はかなり薄暗く、いつもの散歩の時より空気が重苦しい感じがするが、映画と酒のせいで気分は高揚している。
残念ながらノーボディは現れなかった。映画のストーリーになぞらえていうなら、瀕死の重傷を負った状態でないと、ああいう人物とは会えないのかもしれない。
その代わりといっていいか、山を下りたところで、一匹の鹿に遭遇した。遊歩道の脇の草木の新芽をせっせせっせと食んでいた。おそらく市の職員の人が美観のために植えてくれたものだと思うが。
映画のワンシーンで、首を撃たれて死んでいる子鹿を見つけたウィリアムブレイクが、その死骸の横に寄り添い寝そべるシーンがあって、これが本当に美しい。20年何年前、最初に見た時もこのシーンは深く心に残り、今回見た理由の半分は、このシーンをもう一度見たかったから。
鹿と別れて歩き出したところでぽつぽつと雨粒が、、あ、来たかな、と思ううちどんどん雨脚は強くなり、帰る途中にほぼどしゃぶりになった。熱を帯びていた体をほどよく冷やしてくれ、頭の中も日常モードにリセットされる。帰ったあとの夕食のことについて考え始めるなどしていた。

 

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